大判例

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山形地方裁判所 昭和29年(行)11号 判決

原告 安部勇 外七十五名

右選定当事者 安房正雄 外二名

被告 糠野目村

一、主  文

原告等の訴はこれを却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  由

原告等訴訟代理人は、被告村は昭和二十九年六月十八日になされた被告村を宮内町、赤湯町並びに吉島、沖郷、漆山、吉野、金山及び中川の各村に合併する旨並びに同年九月十二日になされた被告村を宮内町並びに沖郷、漆山、梨郷、吉野、金山及び中川の各村に合併する旨の被告村の村議会の各議決に基き、被告村をこれらの町村のいずれにも合併する処分をしてはならないとの判決を求め、請求の原因として、原告等はいずれも被告村の住民である。昭和二十九年三月山形県当局は町村合併に関する県試案を発表したが、同試案によれば、被告村は山形県東置賜郡高畠町を中心としてその近隣の村々を合併する所謂高畠ブロツクを構成するを可とされた。又被告村の従来の純農村的な性格とこれに伴う経済的地理的条件等から考えて県試案に賛成する村民の意見が圧倒的に多数であつた。然るに被告村の村議会は村民の意見に反して請求の趣旨記載の各議決をなした。原告等はこの様な村議会に信をおくことができなくなつたため、地方自治法第七十六条に則り村議会の解散を請求するため村民の署名を求めたところ、千三百四十七の署名を得、その内有効署名数は千百四十四に達し、糠野目村選挙有権者数三千百三十五名の三十六・八パーセント強を占めた。そこで昭和二十九年八月十九日附で原告遠藤外四名連署のうえ、被告村選挙管理委員会に対し村議会解散請求をなしたところ同日これを受理された。然し村議会解散賛否投票、解散後の選挙並びに選挙後の村議会の招集等のためには尚相当の日時を要するのであるが、被告村は請求の趣旨記載の村議会の議決に基いて昭和二十九年十月一日を期して合併の目的を達成しようと努めている。若し右合併が実現したならば原告等の村議会解散請求はその目的を達せずに終結することになることが明らかである。町村合併促進法第一条、第七条の法意に徴すれば、たとえ議会の議決を経たとしても、住民の総意がその議決に反対であることが明らかである場合には、その合併を強行してはならない趣旨であると解しなければならない。よつて本訴に及ぶ次第であると陳述した。

被告村訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、行政庁の処分に先んじて、処分の禁止を求める訴は不適法であると述べた。

三、理  由

原告等の請求は被告村の村議会がなした被告村を特定の町村に合併する旨の決議に基いて被告村が合併処分をなすことの禁止を求めると云うのであるが、市町村の廃置分合は関係市町村の申請に基いて当該都道府県知事の行う処分であつて、市町村が行うものではないことは明らかで、原告等の請求は結局被告村がその議会の議決を経て県知事に対してなす町村合併の申請行為の禁止を求めるにあるものと解せられる。ところで、被告村の行う右申請は地方自治法第七条第一項によつてなす行政上の行為であることは明らかである。裁判所は法律上の争訟については、特に裁判所に出訴しうる旨の明文の規定がなくても、凡てこれを裁判することができるけれども、三権分立の原則から考えると国、公共団体又は行政庁に対し一定の行政処分をなすべき旨又はなすべからざる旨の裁判は特に法律の規定がない限りこれをなすことができないものと解せざるを得ない。そうすると被告村が県知事に合併申請をなすことの禁止を求める原告等の本件訴は爾余の判断をまつまでもなく不適法として却下を免れない。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 松本晃平 立川俊夫 岡田安雄)

(別紙省略)

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